「環境問題」問題 ウソをついてるのは誰かって

「環境問題」問題 ウソをついてるのは誰かって
http://www.janjan.jp/culture/0707/0707018158/1.php(以下「「ウソ」ウソ」と略す)
 あんまり論争は好かないけど、誰もはてブで突っ込まないのでちょっと言っておこう。
 たかじんのそこまで言って委員会武田邦彦氏が登場した環境問題の回は私も見てたよ。
 武田氏の本は読んでないけど、地球温暖化で氏の論拠となっているのはIPCCの第三次報告書であって、今年の2月に出た第四次報告書じゃないんだよね。だって例の「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」って本が出たのは2月下旬だよ。本の執筆から製版までの工程を想像するまでもなく、第四次報告書を参照することなんて不可能なのは明らかだよね。なのに「ウソ」ウソで引用されているのは第四次報告書の日本語訳、これってさ、気象庁のサイトで読めるんだけど、「翻訳 気象庁 平成19年3月20日」って本が出た一月後………2月に出た本でどう引用するんだろ。
 では、第三次報告書と第四次報告書の南極の氷と海面の上昇についての文章を引用してみる。
第三次

・南極の氷床の質量は,降水量の増加によって増える可能性が高い。グリーンランドでは,降水量の増加よりもその流出量の増加が大きいので,氷床の質量は減る可能性が高い。

第四次

・現在の全球モデルを用いた研究によれば、南極の氷床は十分に低温で、広範囲にわたる表面の融解は起こらず、むしろ降雪が増加するためその質量は増加すると予測される。しかしながら、力学的な氷の流出が氷の質量収支において支配的であるならば、氷床質量が純減する可能性がある。

 続いて水位について。
第三次

・地球の平均海面水位は,SRESシナリオのすべての予測幅で,1990年から2100年までに0.09〜0.88m上昇すると予測される。この上昇の大部分は,熱膨張及び氷河と氷帽の融解による(図SPM-5e)。IS92シナリオに基づいた第二次評価報告書では,海面水位は0.13〜0.94mの上昇と予測されていた。今回の報告書で気温の変化予測が高くなったにもかかわらず海面水位の上昇がわずかに低くなっている主な理由は,氷河や氷床からの寄与が以前より小さくなるような改良したモデルが使われたからである。

第四次
 第四次は表になっているので、表中の海面水位上昇値の最小値と最高値を記すと、2090年から2099年の間に0.18〜0.59m上昇のようだ。あとはこんな文章もある。
 「本予測には、グリーンランドと南極からの氷の流出(1993〜2003年の観測から得られた流出率)が増加したことの寄与が取り入れられているが、その流出率は、将来増加する可能性も減少する可能性もある。」
 どっちなんだろうね、専門家もわかんないんじゃないのか。
 けど、「ウソ」ウソで強調している引用文りもとを読んでみる。

グリーンランドの氷床の縮小が続き、2100年以降の海面水位上昇の要因となると予測される。現在のモデルでは、(工業化以前と比較して)世界の平均気温が1.9〜4.6℃上昇すると、気温の上昇による氷の質量の減少が、降水による増加を上回り、表面の質量収支が負に転じると予測されると示唆される。質量収支が数千年間負の値であり続ければ、グリーンランド氷床は完全に消滅し、約7mの海面水位上昇に寄与するだろう。グリーンランドにおける将来の気温は、125,000年前の最後の間氷期の推定気温に匹敵するが、古気候の記録が示すとおり、この時は極域の雪氷面積の減少と4〜6mの海面水位上昇が起きた。

 「125,000年前の最後の間氷期の推定気温」は今より3〜5℃高いと同報告書に書いてあるけど、気温上昇の予測の表を見ると2090年から2099年の間で1.1〜6.4℃上昇するようだ。グリーンランドが危ないってのはほんとっぽいね。でも予測だからね、予測。でもグリーンランドの氷が全部解けるために「質量収支が数千年間負の値であり続ける」という条件は厳しすぎるよ。ていうかその頃には地球環境そのものが大変動してるだろ、さすがに。

 ペッドボトルの再利用に関して、私も「ウソ」ウソと同じく、PETボトルリサイクル推進協議会の「PETボトルリサイクル年次報告書 2006年度版」から数値を引用してみる。

2005年度、事業系回収量97千トンを加えた全回収量は349千トンで、全回収率は65.6%となりました。これは、前年度を3.3%上回り、これまでどおり世界最高水準をキープしています。

 おお、すごいじゃん。で、そのうちどれくらいがリサイクルされたのか。

2005年度の市町村分別収集量は252千トンであり、そのうち独自処理された82千トンが全て輸出されたと見なすと、実質的な回収量は指定法人引き取り量170千トンと推定輸出量211千トンを合計した381千トン以上となります。これによって実質回収率は約72%以上と推定され、実質未確認量は152千トンとなります。今後も推進協議会は、実質的な回収量、回収率を捕捉するための輸出量調査を継続していきます。

 推定輸出量211千トン? 国内で処理する量より輸出のほうが多いじゃんか。輸出先は香港がほとんどだ、中国か……そんなに輸入してどうするんだろ(ゴミ分別に躍起になっている自治体は使用済みペットボトルを含む廃プラをどこぞへ売り払って財源の一部にしてるんだろう)。

容リ協会が取り扱ったPETボトルの利用先における再生樹脂の使用数量は、2005年度は143千トンで対前年度比97%と前年を下回りました。これは市町村が容リ協会を通さず、他のルートに引き渡す独自処理量が増えているためです。

 この独自ルートがつまり中国への輸出なんだけど、何に使ってるんだろう。台湾の李登輝前総統に中国籍の男がペットボトルを投げつけたけど、あれは関係ないか。法律が改正されて輸出は厳しくなるみたいだけど、どうなるんだろうか。ていうか、肝心のリサイクル量は143千トンと捉えていいのか。輸出分がどれだけリサイクルされたか不明な以上、リサイクル率は実質26.8%。このうちペットボトルになったもの、ボトルtoボトルというらしいけど、12千トンだった。なんだ、ペットボトルは回収されてまたペットボトルになるわけじゃなく、ほとんどが繊維製品やシートになってるのか。
 私が気になったのはこれ。

●分母を指定PETボトルの販売重量に(予定)
これまで回収率の分母には、指定PETボトルの樹脂生産量を用いてきました。今回、回収率の分母・分子の定義を見直し、分母として指定PETボトルの販売重量を、分子には市町村分別収集量と使用済みPETボトルの事業系回収量との和を用いることの検討を開始しました。
検討の過程において、いくつかの課題が生じ、分母・分子の更なる精査が必要となっています。そのため、2005年度分は検討段階に留め、2007年度に新定義に基づく回収率改定を実施することとします。

 こりゃ回収率は確実に上がるだろうね。