不安定一久

 拝啓手塚第12回は台詞についての雑感その2。げんしけん20世紀少年を例に考えた。まあそれはともかく、
 漫画原作の映画ということで「オールド・ボーイ」鑑賞。
 ここ何年かの漫画原作映画として最高の部類に入るとともに、原作抜きにしても十分語られうる魅力的な作品である。少なくとも、今年公開された漫画原作物の中では飛びぬけて面白い。おそるべし韓国映画
 まあ、昨今の韓国ブームみたいなもんに拒否反応起こす人もいるだろうし、私としては、まだまだ日本映画のほうが面白いという立場だけど、こういう具体的な作品を見せられてしまうと、来年公開予定の「隣人13号」とか「真夜中の弥次さん喜多さん」は微妙っぽいし、「最終兵器彼女」なんか惨憺たる結果になるんじゃないかと不安になってくる。どうしたって、同じ漫画原作物として素材の料理の巧拙で比較されてしまう、というか、私はする。
 で「オールド・ボーイ」は原作にあったおいしい設定を大胆に脚色し、原作の観念的な結末を違う形で維持しつつ、衝撃度で原作を圧倒し、映画作品そのものとして屹立している、すごかった(その日は続けて「SAW」「血と骨」と続けて鑑賞したんだが、死ぬほど疲れた……帰って丸一日寝てたよ)。正直言えば、原作とはいい意味で別作品だと言えるほどの完成度を誇っていると思うし、韓流云々などという流行り言葉を必要としない。
 上手いのは前半にコミカルな描写を挟み、原作とは違う雰囲気を醸して、主人公(原作:五島、映画:オ・デス)の造形も設定も変え、原作では消化不良だった監禁理由(私にとっては物足りなすぎて拍子抜けした)を、映画は別の理由を創作することで、原作の核心・知らず知らず人をどん底に追い込むほど傷つけてしまう私たちの人生の複雑さを、映画は「人生は複雑じゃない」という台詞で和らげつつも、痛々しいシーンが執拗で精神を追い込んで来ようと迫ってくる。後半に入ると、何故監禁したのかという理由探しが一転し、復讐する立場が復讐される側になって混乱し(これは原作と一緒か)、いやまあとにかくすごい迫力であった。
 結末に触れずに映画の感想は書けない(「SAW」と一緒だな)ので、しばらく間を置くけど、原作を踏襲した点。列挙すると、携帯を渡し来る浮浪者らしいおっさん、催眠術、七日間のゲーム(映画では五日間になる)、序盤の若者にけんかを吹っかけて力を試すところ、青龍探しとかかな。まだあるかもしれんが。