面白かった映画 2005

 年末に書こうと思ってたら、こんな時期に。「ALWAYS三丁目の夕日」の「よいお年をー」で締めようとネタだけは準備してたのに。まあいいや。
 昨年はどのくらいの映画を観たかわからない。数えるのも億劫なほどたくさん観たという話ではない。60〜70本くらいだと思うんだけど。地方在住でこんだけ観れば十分だろうと勝手に満足している。で、以下に面白かった映画と短い感想を列挙していく。おすすめ映画なので、暇があれば是非とも観てほしい(ほんとは劇場で見てほしいけど、上映終わってるしな)。

運命じゃない人
監督・脚本:内田けんじ ブロデューサー:天野真弓
撮影:井上恵一郎 編集:普嶋信一 音楽:石橋光晴
主演:中村靖日 霧島れいか 山中聡 眞島秀和 山下規介 板谷由夏
 昨年最も面白かった映画と問われれば、これを挙げる。構成が素晴らしい。一つの出来事を多角的に描くことで、それがいかにスリリングで興奮することだったのかと、ラストまで息を切らずに駆け抜けてなお余韻溢れる作品である。終わってほしくない作品だった、いつまでも堪能したい世界観が楽しかった。はじめはその日知り合った男女のありがちな恋物語かと思いきや、その裏でうごめいていた侃々諤々虚実の全てが明るみになっていく、ただの何気ない一言が、徐々におかしさを帯びていく。監督の名前だけでも覚えておこう。DVDは1月下旬に発売、必見!

空中庭園
原作:角田光代 撮影:藤澤順一 照明:上田なりあき 美術:原田満生 編集:日下部元孝
音楽:ZAK プロデューサー:菊地美世志
主演:小泉今日子 板尾創路 鈴木杏 広田雅裕/今宿麻美 勝地涼 永作博美 ソニン大楠道代
 文句なく傑作と吹聴したい。公開前に監督が逮捕されるという汚点を残しながらも、スタッフや役者陣の健闘まで無視できない。物語は寂れていくマンションに暮らす4人家族・秘密を持たないという約束事がありながらも、当然4人はそれぞれ秘密を抱え、家族という道化を演じる。そんな中で綻びていく主人公の精神の狂気の迫力に慄然とする。是非とも観てほしい。そして小泉今日子が役者としてまさに本編のように生まれ変わる瞬間を目撃してほしい。

メゾン・ド・ヒミコ
監督:犬童一心 脚本:渡辺あや プロデューサー:久保田修 小川真司
音楽:細野晴臣 撮影:蔦井孝洋 美術:磯田典宏 照明:疋田ヨシタケ 録音:志満順一
主演:オダギリジョー 柴咲コウ西島秀俊 歌澤寅右衛門 高橋昌也/田中泯
 私、オダギリジョーが好きなんですよ。彼をはじめてみたのは「アカルイミライ」だったけど、なんかもうすっかり人気役者になったよね。嬉しいね。で、この映画はゲイの映画というのかな。でも恋愛・老後・そして死というテーマも抱えているから、重苦しい雰囲気があるんだ。それをピキピキピッキーとかミュージカルシーンでバランスをとっている。監督の犬童は大島弓子の大ファンで、この作品の下敷きになっているのも大島作品。彼が今後撮る映画には必ず大島弓子が絡んでくるだろう。それだけに「タッチ」の気のない仕事は残念だな。

親切なクムジャさん
監督・脚本:パク・チャヌク 脚本:チョン・ソギョン
撮影:チョン・ジョンフン 照明:パク・ヒョンウォン 音楽:チョ・ヨンウク 美術:チョ・ファソン
主演:イ・ヨンエチェ・ミンシク クォン・イェヨン キム・シフ イ・スンシン ナム・イル コ・スヒ
 韓国映画という括りではなく、復讐劇の一作品として無視できない。パク・チャヌク監督の「復讐者に憐れみを」「オールド・ボーイ」に続く復讐三部作の最終章。無実の罪を着せられて13年服役した主人公・クムジャ。出所後、彼女は自分を陥れた男に復讐すべく行動を開始する。「もう作戦開始? とんでもない 作戦は13年前に始まったのよ」次々と明るみになっていく復讐の全貌。そして、その男の真の姿が明らかになったとき、観客は衝撃の復讐劇を目の当たりにするだろう。雪が舞う中のラストシーンが素晴らしい。

苺の破片
監督:中原俊高橋ツトム 脚本:Mica
撮影:柳田裕男J.S.C 照明:金沢正夫 美術:和田洋 音楽:MOKU
主演:宮澤美保 梶原阿貴小市慢太郎 甲本雅裕 塩見三省余貴美子 木村佳乃 押尾学カルーセル麻紀
 主演の宮澤と梶原の共同脚本を漫画家の高橋ツトムがプロデュースし中原俊を監督に迎えた作品。漫画家・猫田イチゴはデビュー作の大ヒット以降伸び悩み、マイナー雑誌でわずかに連載を抱えるまでに落ちぶれていた。彼女を平凡な作家に留めている理由が、12年前に起きた片思いの男性の事故死だった。次の一歩へ踏み出すために、彼女を支える親友や編集者のやさしさ、そして作家という才能への絶大な信頼感が、観てて嬉しく、昨年一番好きな映画である。主演の二人はかつて「桜の園」に出演、特に宮澤は副主人公として、劇中もっとも走り回り狂言回し的な存在として出番セリフともに多かったが、その後の彼女は代表作もなくドラマの出演も端役に留まり、映画の主人公のような感情を抱いていたに違いない。そういう背景を知らなくても、この映画はかなり胸に来るだろう。また漫画執筆シーンもふんだんにあり、おそらく高橋ツトムの演出したところだろう、ネームづくりから下絵までの一連を劇中で演じた宮澤には今後是非とも活躍していただきたい。

他に面白かった映画を並べると、「ヒトラー 最期の12日間」「サマータイムマシン・ブルース」「カナリア」「ロング・エンゲージメント」「リンダリンダリンダ」「ALWAYS三丁目の夕日」「逆境ナイン」「さよならみどりちゃん」「隣人13号」「NANA」「Little Birds」「七人の弔」「サヨナラCOLOR」「トニー滝谷