今年面白かったマンガ10

 さて、今年も勝手にマンガの感想を書いてきたわけだが、いつにもまして更新数が少ないような気がする。まあ今年はフラッシュ夜話をはじめたし、これ加えれば例年通りか。月2〜3回しか更新しないからな。このブログも含めてアクセスが殺到することが数回あったのが驚いたけれど、まあ後はちょぼちょぼのアクセス数でのんびりサイトを切り盛りしていたわけで、結局いつもと同じだな。
 ただなー、今年はヒット作品の連載終了が目立ってそれぞれ楽しめたけれども、なんか新規開拓にあんまり励めなかったのが悔やまれる。映画も去年より観たわけでもなく、年50〜60本が私にちょうど良いの鑑賞ペースなのかな。マンガ原作映画もほとんどチェックするつもりだったけど、やはり単館系は地方者にはきついし、結局あんま見られなかったな。ニュースでマンガ原作ものが多いという記事も見かけはしたが、全国公開系ばかりだもんな、いや増えたのは確かだけど、単館系のは昔からあったような気がするんだが、公開されたことすら知られずに埋もれていくってのも惜しい。せめてファンくらいはチェックしてほしいな。
 ああ、映画の話じゃなくて今年面白かったマンガの話だった。というわけで、順位はないけど、思いついたところを10作品列挙していこう。

よしながふみ「大奥」
 正直、1巻ではあんま印象なかったんだよね。男女逆転大奥っていう設定が際立ってるだけに、なんか話自体が薄いというか、設定のための説明っぽい展開だったし。吉宗が過去に何があったのかを探るっていう展開から、2巻でいきなり家光の話になって、そこからそういう事態になってしまった経緯を一人の青年の視点からだけでもって全ての状況を描いてしまう力業と、将軍との恋愛・特にラスト近辺の展開は鳥肌ものだった。将軍と青年が抱擁する場面だけでベスト1決定した感じ。

山名沢湖つぶらら」
 山名沢湖の作品は幾つか読んで何か一つは挙げときゃなきゃと思ってたところに、これが来た。一番楽しくて面白かった。いつものちまちました女性の主人公ではないところがまたいい感じ。格好いい少女であるつぶらというキャラクターが壊れたときとか同級生には見せない表情の表現を、ちまちま女の子として描写すると、人前の彼女とのギャップがもろに表れて、単純に見た目だけでも楽しく読めた。アイドルグループのかわいさっぷりも見逃せないし、つぶらには弟がいるっていう設定も今後の展開にいろんな期待を持たせている。

緑川ゆき夏目友人帳
 堅調。高値安定。ちょっと手馴れた感じがないではないが、普段上手いもん食ってる人間がもっと上手いもん食わせろというような贅沢だろうな。連作という体裁を一切崩すことなく、どこから読んでも作品世界に入っていけるってのもまた緑川ゆきの実力だ。優しい登場人物たちに、いつも心が洗われる。

市川春子「虫と歌」
 新人だからという冠詞を抜きにして、非常に読み応えのある短編だった。ばらまかれた伏線が収斂していく様を、悲劇の中に盛り込んだ手腕に感嘆した。そして高野文子の特徴を踏襲しつつ独自の世界観を構築している点も素晴らしい。感想はこれ→http://www.h2.dion.ne.jp/~hkm_yawa/kansou/mushitouta.html

志村志保子女の子の食卓
 昨年のベストに加えようかと悩んだ作品だったが、今ひとつ抜け切れなかった。今年は感想文でも触れた「あの夏の甘い麦茶」、この一編に打ちのめされたといってよい。連作としての「女の子の食卓」をベストに挙げるというよりも一つの読みきり作品として「あの夏の甘い麦茶」を強く推す。感想はこれ→http://www.h2.dion.ne.jp/~hkm_yawa/kansou/amaimugicha.html

山田芳裕へうげもの
 もう着眼点だけで傑作の予感が漂っていたな。古田織部でしかも茶器ってあんたどこのマンガだよ。これも山田芳裕の手に掛ければ、彼の世界観として描かれてしまうんだからなー。しかも歴史ファンへのアピールも忘れない(本能寺の変の勝手な解釈とか)。来年も見逃せない。

椎名軽穂君に届け
 映画観て泣くことはあってもマンガ読んで泣くことってなかった私にとって、初泣きがこれっていうのもなんか歳を感じるな……。主人公の設定自体は、普段気付かないけど実は可愛い女の子というありきたりなものだけど、根暗っていうのをあまり否定的な描いていない・いや、描いているか……。前作は普通の女の子を主人公にすることで読者を作品世界に引き込みやすかったが、今回は逆に観察対象として主人公を設定しながらも、こんだけ読者を引っ張り込んでいるんだから、やっぱ椎名は侮れんな。今度は着地に失敗しないでほしい。感想はこれがあるな→http://www.h2.dion.ne.jp/~hkm_yawa/eigateki/kiminitodoke-2.html

久米田康治さよなら絶望先生
 「ハヤテのごとく」はほんとに面白いよなー。個人的にマリアの過去が気になっているし、あーたんも気になるし、いきなり登場する幽霊神父になるともうなんでもありだな。「絶望先生」の今後も楽しみだ。


 あれ、8作品挙げてうち7作品が連載中ではないか。うーん、今年はあんま短編集読まなかったんだよな。短編好きとしてまことに不本意な年だったな……というわけで以下の2作品は完結したもの。

大場つぐみ小畑健DEATH NOTE
 最後まで楽しませていただきました。これしかないっていうラストが見事に決まった。インフレする謎、散りばめられた伏線あるいはミスリード、週刊連載という体裁を生かしきってなお単行本としてまとめて読んでも面白いということは、こりゃもう作品として優れている証でしょう。拍手。感想は7巻のがあるな→http://www.h2.dion.ne.jp/~hkm_yawa/kansou/DeathNote-7.html

木尾士目げんしけん
 いやー素晴らしかった。最初の「陽炎日記」から読んでいる作家だが、ここまで弾けるとは予想できなかった。といって前作で見せた恋愛描写も所々に健在、なんかすごいね。作家として急成長する様を目の当たりにしちゃった。ほんとに楽しかった、ありがとうございました、木尾士目先生。感想は、とりあえずこれでも→http://www.h2.dion.ne.jp/~hkm_yawa/kansou/genshiken09.html

 今年は他にも羽海野チカハチミツとクローバー」、森薫「エマ」といった人気作の連載終了が印象深い。あと、記伊孝犯罪交渉人峰岸英太郎」も何気に今年完結している、いや好きだったんだよ、この作品。福本伸行最強伝説黒沢」も終わっちゃったな。あとは、「もやしもん」「団地ともお」なんてあたりは面白くて当然みたいな感じだよ、連載終わったらマイベスト10入り決定済み。

 それでは、全漫画家に最敬礼! 今年もたくさんの面白いマンガを読むことが出来ました、ありがとうございました!