「ひとりでマンガ夜話」に行ってきた

 3/24。朝日カルチャーセンターのいしかわじゅん氏による講義「ひとりでマンガ夜話」に行ってきた。なんか似たような名のサイトがどっかにあったけど、そんなのどうでもいい。
 内容は、吾妻ひでお失踪日記」を手元に、本人から聞いた話を交えつつ、失踪日記の裏話的な様相を。その後は森下裕美大阪ハムレット」からアクションという雑誌の特殊性に触れ、なんでマンガを描かないか(描けないか)という個人的な話をしつつ、今も「鈴木先生」を生み出すなどなかなか侮れない存在という話から、自分が編集した「ラボ」の話をして、質疑応答をやって、1時間半の予定が15分ほど超えて終了。以下は記憶を頼りに箇条書き。
 何の話をしようか決めていなかったけど、一応「失踪日記」と「大阪ハムレット」についてはメールで告知済みだとか。(私は「大阪ハムレット」は未読)。会場(といっても教室程度の広さで4、50人くらい?。講堂みたいのなところを想像していたので、その狭さにびっくりした)にやって来た面子を見て、その作品の話をしても問題ないだろうと判断。
 吾妻ひでおについて。(「BSマンガ夜話」で話していたことと重なっているし、各種インタビュー記事もあるからなー。それでも、ざっと流れを書くと)少年チャンピオンで「ふたりと5人」が売れるけど、新世代のギャグ・鴨川つばめとやがきデカ」に追い落とされてエロマンガ誌へ(秋田書店はひどいという話も。なかなか絶版にしない→新装版とか選集とかが他の出版社が出そうとしてもまだ版権があるので無理という話らしい)。そこで好き勝手にマンガを描き、それが当たって復活。突然の失踪。編集者の秋山(? 高野文子の旦那とのこと)から吾妻ひでおが行方不明だという連絡。すぐに保護されたので、なんでと訊きに行く。マンガ描くの苦しい。失踪して連載落として仕事しなくなって楽になった。でも生活費稼がなくちゃと、ちっちゃい個展開くんで絵を買ってよ。新谷かおる松本零士のアシスタント)がほとんど買っていってしまったとか。また失踪。失踪中何してたの? 死のうと思って山に行ったけど、死ねなかった。山には食べ物なくて街に来て残飯食ってた、その辺は「失踪日記」にも詳しい。また失踪。今度は東京ガスの「わが社のホープさん」とか言う記事が高千穂遙からFAXで送られる。吾妻のイラスト。吾妻が東になってるけど明らかにひでお本人、どうみたってばれるだろう。「失踪日記」の内容は結構細かい、ちゃんと記憶している。それは表現者としての自負だろう、ホームレスだったけどホームレスじゃない、俺はクリエイターだ、みたいな感じ(多分、自分を客観視できる力があるってことなんだろう、それが表現者には必要なんだろうな)。今は「失踪日記」の類似本みたいのばかりだけど、リハビリ期間だと思っててくれ。絵も昔のに戻ってきているし、大丈夫だ、とかなんとか。
 森下裕美について。「大阪ハムレット」は面白い、おすすめ。最初は嫌だった。なんでゴマちゃんのようなかわいい絵が描けるのに、こんなのを描くんだ、理解できない、読まない。本が贈られてきたけど無視、でもふとしたときに読んでみる。一気読み、面白かった、後悔した。連載読んでりゃ良かった。
 それが連載されているアクションという雑誌と版元の双葉社について。今はどこも編集者がはずさない作品作りに力を入れてて編集会議がうざい(実際にうざいとは発言していないよ、私がそう感じただけ)。アクション、少なくとも昔自分が描いてた頃のアクションはよかった。電話一本で掲載決定、ちょっと話して連載決定、それが「フロムK」(この辺のは「漫画の時間」にも書いてあったような気がする)。でも、そんなことやってるから全然売れない。一時期は一万部切ったとかいう話も。でも時々神風が吹く、「がんばれタブチくん」「クレヨンしんちゃん」「嗚呼!!花の応援団」とか。今も「大阪ハムレット」とか。ちょっと前には、こうの史代「夕凪の街 桜の国」、あんな暗い話、普通は載せないよ。そして「鈴木先生」。「鈴木先生」は読む人を選ぶだろう。
 自分が編集した「アクション ラボ」について。(これは「漫画の時間」に書いてあるはず。西風についても「BSマンガ夜話」で話してたことと重なっているので私は少々退屈、そもそもしゃべり方が、マンガ夜話の調子だし、時々作家の名前や作品名を忘れて観客に突っ込まれるという場面も。まあ、それも含めての「マンガ夜話」なんだけど。とりあえず、まとめて書くと)内田春菊は言うことを聞かない、原律子が原稿落とした、寺田克也にマンガを描かせたのは大当たり、やまだないとにシリアス物描かせたらエロ描いてそれ以降エロばっかり描くようになった、とか。
 質疑応答。
 「マンガ夜話の復活は?」 難しい、現プロデューサーは声が小さい(発言力が弱いという意味だろう)ので企画が通らない。BS1がニュース専門になり、それまで1で放送していた番組がBS2に流れ込み番組が再編され、マンガ夜話もその煽りを食う。夜話の派生番組もあったし、視聴率も良かった。あの時間帯の、しかもBS2で1%という視聴率は民放換算で10倍に相当するとのこと(深夜番組で10%っていわれれば、確かに高い視聴率だ)。でも10年やったし、区切りとしてはちょうど良いんじゃないの?
 「「MASTERキートン」問題について」 よく知らない。話せば長くなるけど、自分は原作者にやや肩入れしている。
 「マンガ夜話はなんで生放送だったの?」 最初の放送が生放送だったから。その後公開録画もやったけど、生放送は緊張感があって、録画とは全然違う。録画なら適当にしゃべっても後で編集してもらえるという思いがあるけど、生はそうもいかない。トラブルも多かったけど。石森プロと息子らにぐるつと囲まれて(以下略)。
 「マンガ書いてよ」 商業雑誌で多くの読者に読んで欲しいから同人誌という発表手段はとらない。それと仕事としてやるほうがモチベーションが上がる、背中を押してもらえる。ネット連載もしたことあるけど、やっぱり雑誌が好き、本で手にとってパラパラとめくる感覚が好き。

 といったかんじの105分だった。