最近になってさまざまに取り沙汰されるようになったマンガ原作映画。特に昨年の「NANA(大谷健太郎)」を契機として、その方面からの話が頻出するようになったと思う。私がマンガ原作映画を意識するようになったのは、たかだか3、4年前であるが、その間だけでも大きな変化が見られた。1999〜2005年公開のマンガ原作映画の主なものを列挙してみる、中にはこんなのも映画化されてたんだと驚かれる方もいるだろう。
 1999年、鮫肌男と桃尻女石井克人)・富江及川中)・月光の囁き塩田明彦)・サラリーマン金太郎三池崇史)・GTO(鈴木雅之
 2000年、ガラスの脳(中田秀夫)・うずまき(Higuchinsky)、守ってあげたい!(錦織良成)・NAGISA なぎさ(小沼勝)・金髪の草原犬童一心)・弱虫 チンピラ(望月六郎
 2001年、張り込み(篠原哲雄)・サトラレ本広克行)・アカシアの道(松岡錠司)・RED SHADOW 赤影(中野裕之)・修羅雪姫佐藤信介)・殺し屋1(三池崇史
 2002年、サムライガール21(及川中)・化粧師(田中光敏)・羊のうた花堂純次)・青い春(豊田利晃)・ピンポン(曽利文彦)・ホテル・ハイビスカス中江裕司
 2003年、ラヴァーズ・キス及川中)・blue(安藤尋)・ぼくんち阪本順治)・あずみ(北村龍平)・ALIVE(北村龍平)・地獄甲子園(山口雄大)・ドラゴンヘッド飯田譲治)・スカイハイ(北村龍平)・アイデン&ティティ田口トモロヲ
 2004年、けっこう仮面長嶺高文)・リアリズムの宿山下敦弘)・キューティーハニー庵野秀明)・海猿羽住英一郎)・予言(鶴田法男)・デビルマン那須博之)・下弦の月二階健)・恋の門松尾スズキ)・まいっちんぐマチコ先生河崎実)・オールド・ボーイパク・チャヌク)・青い車奥原浩志)・恋文日和大森美香/須賀大観/永田琴恵/高成麻畝子)
 2005年、鉄人28号(冨樫森)・真夜中の弥次さん喜多さん宮藤官九郎)・隣人13号井上靖雄)・逆境ナイン羽住英一郎)・さよならみどりちゃん古厩智之)・NANA大谷健太郎)・タッチ(犬童一心)・ALWAYS 三丁目の夕日山崎貴 )・同じ月を見ている深作健太)・東京ゾンビ佐藤佐吉)・あずみ2 Death or Love(金子修介
 自分の分かる範囲で調べた限りでは、2004年から激増している。特に全国公開される映画は上に挙げた例で1999〜2003年までが8本なのに対し、2004〜2005年が10本、確かに「最近マンガ原作がやけに増えたな」という印象をもたれるのも全然不思議じゃない。
 で、どんな傾向があるのかと素人考えしてみたところ、マンガ原作映画は大きく3つに分けられることができるんじゃないかと思った。……まあ普通にVシネと単館系とメジャー系の3つってことなんだけど。
 まず一つ目がビデオ路線。上の例では挙げなかったが、毎年のように公開されているマンガ原作映画ってのが実はある。「釣りバカ日誌」は今年で17作目、「難波金融道 ミナミの帝王」もシリーズ化されているし、「借王(シャッキング)」シリーズもある。また「リング」からはじまるホラー映画も盛んに作られるようになり、伊藤潤二の諸作品、特に「富江」はシリーズ化されているし、日野日出志楳図かずおの作品も映画化されている。「釣りバカ」は違うけど、それ以外はほとんどビデオ販売を主目的としてて、劇場で公開するってのは、箔付けみたいなもんである。それに公開されれば映画情報誌で採り上げられるから、ビデオ販売の宣伝にもなる。Vシネだな。
 次が単館系。監督、脚本家、プロデューサーらが是非ともこのマンガを映画にしたいっていう一念によって突き動かされることが多いので、自ずと熱の篭った作品になりやすい。たとえ完成にこぎつけてもスポンサー探しなどで四苦八苦して公開日が決まらないこともある。例えば「blue(安藤尋)」もそうじゃないかな。私はこれを2002年3月の新潟映画祭で観たけど、劇場公開は翌年の3月だったんだよな。上映館を確保できないってのもあるんだろうけど、金がないからフィルムもたくさん作れないし、ほんとに大変だなって思う。宣伝費も少ないし。だから映画化自体知らなかった、ということがあってもおかしくない。まあ企画・製作から公開まで苦労している分、映画の内容もそれなりに期待できるものになっていると私は感じる。
 で、一番癌なのがメジャー配給。マンガ原作映画はつまらないものばかり、という偏見の大いなる要因でもある。原作がどうのこうの言う前に映画そのものがつまらん、という憤りもある。同じつまんないもんなら、まだ単館系のほうがましだなって感じでもある。ほんと、どうにかならんもんだろうか。
 しかし、ほんとにマンガ原作映画が増えたな。今月これから公開されるのでも「花田少年史」「ラフ」「青春☆金属バット」だろ。秋には「いちばんきれいな水」「ストロベリーショートケイクス」、「蟲師」もあるし。先日買ったおかざき真理の新刊には「渋谷区円山町」が映画化決定ってあるし。昨年暮れに公開された「ルナハイツ」も続編あんのかよ。北村龍平はあいかわらず高橋ツトム原作の映画化に躍起になってるし。「僕は妹に恋をする」「フリージア」ゲゲゲの鬼太郎」「吉祥天女」「神童」「キャプテン」……もうなんでもありだな。